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ガシャーン
『お義母さん!またなの!もういいわ…もう金輪際あんたのご飯なんて作らないから!』
そう言いながらひっくり返したままの昼食を片付けるでもなくピシャリと障子を閉め嫁の優子は出て行った
ミツエは
『あ~あ~』と声にならない嗚咽を上げ頭を抱え丸くなっていた
『おばあちゃん…つらいの?』
その声にピクリと反応しミツエは顔を上げた
……おや?お嬢ちゃんはどから入って来たの?
…もしかしてあの世からのお使いさん?
『おばあちゃん…話せなくても大丈夫…』
『おばあちゃんはつらいの?私がおばあちゃんのつらい思い出食べてあげる』
少女は老婆の額に小さな手のひらをあてようとした
…つらい事…生きてる事がこんなにつらいなんて思う日が来るなんてね……
嫁にした仕打ちがぜ~んぶ返ってきたよ……
生きていればお嬢ちゃんみたいな可愛いらしい孫もいたろにね……流産させてしまったのもアタシが皆悪いの……
…お嬢ちゃんがお使いに来てくれたんならアタシも思い残す事はないよ……
ミツエは少女に向かって手を合わせた
少女は老婆の額に手のひらをあてたがすぐに手を離してしまった
『おばあちゃん。ごめんなさい…おばあちゃんのつらい思い出は食べきれないの……』
……そうかい お嬢ちゃん無理だったかい……生きていくために何でもやってきたからね……お嬢ちゃんには食べきれなかったかい……ばあちゃんこそごめんなさいね………
少女は涙を浮かべ
『おばあちゃん…ごめんなさい 』
……いいんですょ。いつかお迎えが来てくれる時にお嬢ちゃんみたいな可愛い子が来てくれたら…それまで待ってますょ……
ミツエは再び少女に向かって手を合わせた
少女の姿がいつの間にか消えてあたりはシーンと静かになった
…いっそ楽にもなれないもんだ……
ミツエはまた
『あ~あ~』と嗚咽を上げて泣いていた
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