イグアナ

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「その準備で忙しかったんだね」 「色々とな時間もないし大変だったよ」 「それでいつ行くの?」 「明日」 「えっ」 「これから残りの準備するんだ」 「明日…明日なの?」 彼は時計を見ると 「じゃぁ行くわ」 彼が立ち上がる。 「待って」 私は彼の腕を掴んだ。 「なに?」 「いつ帰ってくるの?」 「分からない」 「私はどうなるの?」 「どうなるって」 「待っていていいの?」 私は彼を見つめた。 「樹」 「私はあなたの恋人ですか?」 彼は驚いたように 「ごめん…僕にとって樹は妹だった」 「妹」 「ごめん」 そう言うと彼は優しく私の頭をなぜた。 そして彼は店を出て行った。 私は頭も心も空っぽになった。 涙もでない… さくらさんが心配そうに声をかけてきた。 「大丈夫?」 「はい」 それだけ言うのが精一杯だった。 店を出て家に帰る途中に雨が降ってきた。 空っぽの心にどんどん雨がたまっていく…
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