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戻ってきた村長はどこから持ってきたのか黄緑色の扇を持っていた。
その扇はどこか神秘的で、異様なほどボクを惹き付けた。
「……村長、それは?」
「この村に昔から伝えられる扇だ。名を『スプートニク』といってな、風神ハーネル様が風を操る時に使ったと言われる伝説の品だ」
「風神様の……」
よく見るとその扇にもボクの肩にある十字架と同じような十字架が刻まれていた。
「これを持っていけ。何かの助けになるやもしれん」
そう言って扇をボクに渡す。
初めて目にして、初めて触ったにもかかわらず、その扇はとてもボクの手に馴染んだ。
まるでずっと昔に実際に使ったことがあるような……そんな懐かしい感じがした。
「持っていくって、どこに?」
「世界最高の聖地、オリンポスだ」
「オリンポス?」
「世界に異変が起きているのは確かだ。お前が聞いたという不思議な声のことも、そこに行けばなにか分かるかもしれんぞ」
聖戦……。それにボクの肩にある十字架の痣。
確かに、なにも分からないでいるのは気分的にも悪いしね。
「……分かった。行ってみるよ」
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