299人が本棚に入れています
本棚に追加
「ん~!風が気持ちいいなー!」
海の見える見晴らしのいい丘。この場所はボクのお気に入りだ。
なぜならここは気持ちのいい風が吹く。
流れるように吹く風は、ボクを優しく包み薄い緑色の短い髪をなびかせる。
ボクの名前はフー・ゼテギネア。
この場所からすぐの小さな村に住む十六歳の女の子。
「風神様、今日も気持ちいい風をありがとうございます」
ボクは風の吹いてくる方角に向かって手を合わせ、頭を下げた。
常識だけど、世界中で吹く風は全て、風を司る風神ハーネル様が吹かせてるんだ。
つまりボクが今こうして気持ちよく風を感じることが出来るのも風神様のおかげ。
だから毎日この場所で風神様に感謝の言葉を口にするようにしている。
「さて、そろそろ戻らなきゃ村長に怒られちゃうや」
━━……よ
「え?」
今誰か何か言った?
ボクは辺りを見渡し声の主を探した。だけどボク以外に誰かがいる様子はない。
━━我が子フーよ……
聞こえてきた声はとても儚げで、集中しなければ聞き逃してしまうほど小さなものだった。
その声は次第に大きくなっていき、それに伴い風も力強くなっていく。
そこでボクは気づいた。この声、風から聞こえてきてる?
━━聖戦が……始まる
最後に一際強い風が吹き、それを最後に声は聞こえなくなってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!