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急いで家を飛び出したボクが見たのは、人間よりも一回りも二回りも大きく、二本の角と鋭い爪をもち、闇と間違うほど真っ黒な身体をした、化け物だった。
「な、何あれ!?」
その化け物は暗闇の中で妖しく光る紅い目をボクに向けてきた。
〔人間。久しぶりの人間!いただきま~す!!〕
「えっ……!?」
化け物と目が合った次の瞬間、鋭利な刃物のような爪を振り上げ、化け物はボクに襲いかかってきた。
ボクは化け物に背を向け、必死で駆け出した。
捕まったら殺される!
死にたくない死にたくない。
「うわっ!」
必死で走っていて足下を見ていなかったからか、ボクはつまづいてこけてしまった。
震える足で立つこともままならないボクは、そのまま四つん這いで這った。
しばらく這って振り返ると、化け物はすでにボクを見ていなかった。
たまたま近くにいた村の人を、化け物は片手で掴んでいた。
「うわあぁぁ!!誰か助けて!誰か――」
最後の言葉は、かき消える様に化け物の口の中に消えていった。
「そんな……」
目の前で人が、しかも知り合いが化け物に喰われるなんて。
いきなり、そんなのあんまりだ。
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