299人が本棚に入れています
本棚に追加
〔ふぅ。やっぱり人間は旨いなぁ〕
化け物は満足そうにそう言って、再び人を襲い始めた。
助けたい。だけど足が震えて動かない。誰か助けて……!
「やめんかぁ!!」
泣きそうになっていたボクの耳に、そんな怒声が聞こえてきた。
俯きかけた顔を上げると、いつのまに家から出てきたのか、村長が物凄い剣幕で化け物を睨んでいた。
あんな怖い顔、初めて見たや……。
化け物は突然の叫び声に一瞬だけ反応したけど、声の主が村長だと分かると再び村長から目を離した。
村長はけっこう年をとっていて身体も小さいし、肉付きもよくない。そんな村長より、若い村人を食べる方がいいと判断したんだろう。
「これ以上好き放題……すんな!!」
〔ゴアッ!?〕
村長は軽やかにジャンプすると、化け物の後頭部に凄まじい蹴りをお見舞いした。
化け物は地面を抉りながら吹き飛び、そのままうつ伏せになって倒れた。
確かに村長は護身術とか教えるくらい強いけど、化け物吹っ飛ばすとかアリ?
「ふんっ。思い知ったか」
〔グガガ……じじぃ……!〕
化け物は蹴り飛ばされた後頭部を擦りながら起き上がると、村長をにらみつけた。
ボクなら一発で気絶してるだろう村長の蹴りを受けて立つって、やっぱり化け物だ。
最初のコメントを投稿しよう!