その木の下で

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「---黒冬の声が出なくなっただぁ!?」  柄にもなく、素っ頓狂な声が自分の口から出た。  それ位、驚いているのだと察してくれ。  平助の叫びに、俺は奴の居る黒冬の部屋に向かった。  黒い長い髪の綺麗な面の男。  人形みてぇに表情があんま変わらない。  でも、意外と感情的になりやすい奴。  それが俺が黒冬に感じている印象だ。  あれで女だったら、新八あたりがしつこくくどくだろうにな。 「何か変なものでも食べさせたんじゃないの?」 「んな訳あるかっ!!」 「煩いぞ、平助。」  黒冬の部屋には俺以外に総司と一と土方さんと源さんが居る。  近藤さんは昼までには戻るってたから、もうすぐ帰って来るかな。  新八は昼の巡察行ったからまだ来ねぇし。  そういや、山南さんは何処行ったんだ? 「---本当に声が出ないのかね?」 「-----。」  源さんが黒冬に呼び掛け、あいつは口を開くが声は出てこなかった。  ぱくぱくと口を開閉するだけ。  細い喉を白い手が押さえる仕草に、俺は胸が痛んだ。  痛々しい姿に、つい声を荒げちまう。 「お前、何見てやがったんだ!?」 「知らねぇよ!!黒冬が机に突っ伏して寝てたから布団に寝かしただけだよ!!」 「起きたらもう喋れなくなってた…か。」 「おい、黒冬。お前、何か心当たりはねぇのか?」  土方さんに問われた黒冬は机の上の紙に筆で字を書いていく。  書いた紙を皆に見えるように掲げる。  初めて見る彼の字は綺麗な字だった。 「゙思い当たらない゙か。---君が分からないなら僕らには見当もつかないよね。だって、君は人間じゃないんだから。」 「総司!!そんな言い方…。」  食ってかかる平助を黒冬が止めた。  俯いていた顔が上がり、その表情は珍しく、俺はふとあいつの白い頬に手を伸ばす。  いつもより、頬が赤い気がしたんだ。 .
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