その木の下で

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「お前…おいおい、熱あるんじゃねぇか?」 「熱!?」  額に手を当ててみる。  あいつは驚いた表情のままだ。  自慢じゃねぇが、冷え症知らずの俺の手は年中あったけぇ。  あ、だからって俺は冷たい男じゃねぇからな。  心も身体もあったけぇ男よ!  …って、脱線しちまったな。 「俺の手よりあちぃんだから、絶対熱あんだよ!」 「春と言えど夜はまだ冷えるからね。昨日の夜の巡察で身体が冷えたんじゃないのかい?」 「ったく、巡察で風邪ひくなんざ鍛え方が足りねぇんだよ!」 「本当に見た目通り、ひ弱だね。」  黒冬は納得いかない様子で皆(特に総司)を見つめる。  反対側に居た平助も黒冬の着物の合わせ目から手を入れ、細い首に触れた。 「確かに熱いかも。---でも、布団に寝かせた時は分かんなかったぜ?」 「着物の上からだからだろ?」  黒冬は俺と平助の手を退けると、また机に向かう。  さらさらと淀みなく書かれる字をまた掲げた。 「゙俺は体質で病気にはかからない゙---て言われても現に熱あんじゃん。」 「初めての熱なんだな。」 「取り敢えず、横になれ。後、頭冷やして身体温めて寝てろ。」 「俺、水汲んで来る!」  平助が部屋を飛び出し、俺は源さんと黒冬を宥め、寝かせた。  ただの風邪だと、俺も疑わなかったんだ。  -----この時は。 .
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