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今日は久しぶりに、楽しい稽古が出来そうだ。
それは道場に彼の姿を見つけたから。
「一、僕と稽古しない?」
「---お前と?」
「そう、僕と。」
平隊士に稽古を付けるのにも飽きた頃。
僕は一に声を掛けた。
予想通り、一は眉間に皺を寄せ、真面目な表情で考えている。
それを見るのが楽しいんだよね、僕は。
「お前、隊士たちの稽古は終わったのか?」
「勿論。---動ける人、居ないんだよねぇ。」
「-----やり過ぎだ。」
「あはは!---でも、加減したんだよ?僕なりにね。」
「お前の加減は加減したことにはならない。」
「ひっどいなぁ、一は。」
真面目な彼は真面目な答えを返す。
長い付き合いだから、大体の考えも予想がつく。
彼だって、こんな稽古が退屈でない訳がない。
「最近、捕り物が少ないから運動不足なんだよね。」
僕が木刀を構えると、彼も手にしていた木刀を構える。
彼の目は既にやる気十分。
本当、素直じゃないんだから。
「---始めようか、一。」
僕はにっこりと笑っていた。
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