48人が本棚に入れています
本棚に追加
ピリピリと肌に刺さるような殺気に、僕は楽しくなった。
ついつい楽しくて、顔がにやけてしまう。
「---余裕だな、総司。」
「そうでもないよ?一相手に油断してられないから…ね!」
僕の一撃を一は真っ向から受け止めず、器用に受け流した。
すぐに、反撃の一撃を返してくる。
息を吐く暇さえない程、木刀を打ち合う。
ああ、何て楽しいんだろう。
でも、それは唐突に遮られた。
「---お前たち、いい加減にしたらどうだ?」
気配も感じさせず、彼は僕らの木刀を止めた。
素手で、受け止めたのだ。
驚いたのは一も同じな様子だ。
僕は不満げに、彼を見る。
折角の楽しみが台無しだ。
「---邪魔しないでくれない?黒冬君。」
「悪かった。---然し、お前たちが木刀と言えど本気でやり合うと周りに迷惑だ。」
「どうして?」
「見て分からないのか?」
黒冬君の言葉に周りを見渡すと、他の隊士たちは手を止めていた。
人垣が出来ているのはいつものことだ。
だが、それがどうしたのだろうか。
「---皆が稽古しないから?」
僕の言葉に、素直に反応する隊士。
そんな姿に、興が冷めてしまう。
僕はつまらなくなり、木刀を下ろした。
.
最初のコメントを投稿しよう!