42人が本棚に入れています
本棚に追加
――!?
夜の王である彼女、レミリア=スカーレットが感じたのは、第一に霊夢に王手をかけたことの喜び、第二に自らを縛り上げる霊力の縄の熱さだった。
「あんたねぇ、いい加減にしなさい」
縄を解こうと躍起になってもがくレミリアに、霊夢はご機嫌ナナメな声で言った。
「神社に来るのは良いんだけど……いや、本当はあんまり良くないんだけど、流石にこんな真夜中に来るのは非常識よ」
――非常識? この巫女は何を言っているんだろう。私は夜の王。則ち私の為すこと、それは全て常識だというのに
レミリアの不服そうな顔を見て、霊夢は呆れたように溜め息をついた。
「何よ、その顔。なんなら、朝までそこにそのまま捨て置いてあげてもいいのよ?」
――酷い巫女ね。折角遊びに来てあげたのに、こんな脅しをかけるなんて
レミリアは内心、冷たすぎる霊夢の対応に不満たらたらであったが、文句など言ったら本当に捨て置かれないので、大人しく黙っていた。
「……全く、しばらくそこで反省してなさい。私はお茶を飲んでくるから」
それだけ言い残し、霊夢はレミリアの前から立ち去った。開けっ放しの戸口から、涼しげな夜風が吹き込み、レミリアの蒼髪を優しく撫でる。
――……やはり、私は霊夢が好きだ。霊夢が好きだからこそ、こんな戯れにも穏やかな気持ちでいられる
一人残ったレミリアは、風に揺れる木々の音に耳を傾けながら、彼女らしくもない感傷に浸っていた。
最初のコメントを投稿しよう!