王の冥い遠足

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   ――後百年もすれば、もうこの巫女とも会えなくなるのだ。多少の無礼には目を暝ってやろう  そう、彼女は吸血鬼。人間よりも遥かに長い寿命を持つ種族。レミリアが霊夢達と馬鹿騒ぎするのも、吸血鬼の時間からすれば一瞬の出来事に過ぎない。  レミリアは吸血鬼としてはまだ子供だが、人間の言う子供とは違い、将来必ず訪れることになるであろう『夢の終わり』を見通せる程度の分別はついていた。  彼女にとっての、夢の終わり……それは即ち、霊夢の死。  霊夢の死は、彼女の能力を以てしても、絶対に避けることの出来ない『運命』。なまじ運命を操ることが出来るが故に、その事実はレミリアに重くのしかかっていた。  ――だからこそ  運命だからこそ、と、彼女は思う。  ――限りある時間の中で、精一杯騒いでやろう。それで、霊夢が死んだ後も私のことを覚えていられるように、精一杯迷惑をかけてやろう  不意に一陣の強い風が吹き、レミリアは反射的に目を暝る。帽子が吹き飛ばされ、レミリアの隣にふわりと落ちた。  
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