#01 紺碧の糸

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 涼子は身を屈めて衣服と残された灰に触れる。少女はエレメントの力とされるその鎧装備を、自らの右中指に填めた“双魚宮”のマークが彫られた銀の指輪に凝縮させ、制服姿に戻る。 「上手く魂だけ逃げたか」 「鳳先輩。傷……」  屈んだ涼子の真横に寄り添うように屈む少女。斬られたその腕を申し訳無さそうに見ていた。 「エレメントの力はこのエレメントリングに凝縮する事が出来ます。指に意識を集中してみて下さい」  涼子は頷いて、少女の言うとおりに意識すると、漆黒の鎧装備は光を帯びて指輪に形を変えた。“天蠍宮”のマークが銀の指輪に彫られていた。 「痛っ……」 「触らないで下さい。手当てします。ブレザー脱いでください」  涼子は急激に腕に痛みを感じると、右手で押さえようとするが、少女に右手を掴まれてブレザーを脱ぐように指示される。 「名前……聞いてないよね?」 「小峯楓(コミネ カエデ)と言います」 「あまり堅苦しいの好きじゃないんだけど、呼び捨てで呼んでも……構わないかな?」 「その方が嬉しいです」  ブレザーを脱いだ涼子のワイシャツには血が滲んでいた。楓は持っていたハンカチで止血する。 「うっ……」 「す、すみませんっ! 手当ては応急処置ですから、後できちんと看ますね」  強くハンカチを巻いた瞬間、涼子は呻き声を零した。楓は慌てて少し緩め、涼子はそんな慌てた様子の楓を見て笑った。 「ふふっ」 「何ですか? 気色悪い笑いして」 「随分辛口だなぁ……やっぱり転生者だけあって似てる点あるんだね」 「先輩はやはり冷静沈着な性格ですね。非現実的な事が次から次に起こるから、吃驚するかと予想していたのに……」
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