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和室へ続く渡り廊下の前で、長身のスーツ姿の男性と、椿専門高等学校の制服を着た少女の後ろ姿があった。
「見た? あの力は間違い無く私達が探していたエレメントの……」
「はい、そうですね。まさか貴女と同じクラスの生徒とは」
少女が話をすると、隣の30代前半の男性は落ち着いた敬語で返した。
「鳳涼子。彼女がエレメント攻撃系最強と言われる天蠍宮のエレメント……。中学時代剣道の腕が群を抜いていたのも頷ける。けど、そんな現実的な力ではエレメントの力を制御出来ないわ」
「その為にサラ・イクテュエスの転生者、小峯さんが均衡を失わないように居るのですから」
「そうね。後は私達“導く者”がきちんと道を教えなきゃね?」
「はい。クラスでの様子、観察お願いしますね?」
「任せなさい。常治(ジョウジ)こそしっかりね」
常治と呼ばれた男性は頷くと、日の当たる窓際へ移動した。眼鏡で知的な印象があり、整った端正な顔立ちから、大人の魅力が窺えた。少女の方に向き直ると、軽く頷いて「はい」と返事をした。
「あれから随分と経ちましたね……もう数え切れない月日が」
常治は澄んだ青空を見ながら、過ぎ去った月日と時空間をも越えた運命の歯車に翻弄される自分達はどうなるだろうと行く末を心配していた。それを見た少女は常治の隣に行って笑みを零した。
「また同じ事を繰り返さない為に、あの子達は絶対強くなるって私は信じてる。この戦いが、女王国からの柵を断ち切る」
少女は笑みを浮かべたまま、和室の方を見ると常治と共に踵を返して文化会館から立ち去って行った。
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