#02 カミーリア女王国

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「ナシェル元議会長の場所、分かりましたか?」 「東の離宮にどうやら潜んでいると偵察の知らせが」 「東の離宮……。此処は任せます。住民の非難を最優先に考えて下さい……女王直々にナシェルを討つように仰せつかったので行ってみます」 「はい!」  同期の騎士は、オリヴィアの言うとおりに住民非難を進める為にテントを出て行った。オリヴィアは少女の方に向き直る。 「戦いが鎮まれば家に帰れるから。此処で少し待っていなさい」 「はい……」  頷いた少女を見て、オリヴィアは愛刀・叢雲(ムラクモ)を帯刀するとテントから出て青毛(全身真っ黒の最も黒い毛色)の漆黒馬に騎乗した。  白銀に輝くカミーリア騎士団の鎧が夕日を映し出す。オリヴィアは陣営が敷かれたクロム村から東の離宮向けて馬を跳ばす。 (くそっ……団長が殉職など有り得ないっ! 副団長は無事だろうか)  東の離宮へ向かう最中、やはり死体が行く手に転がっていた。たった1人の欲望が、何百人の命を落とさせる。オリヴィアは憤りを感じた。手綱を強く握り締めると真っ直ぐその鋭い眼光を進行方向へ向けた。  クロス村からは北西の位置にある東の離宮。シンプルな白い小規模な宮殿。初代女王が最初に建てたとされ、神聖な場所とされている。オリヴィアは馬を置いて宮殿内に向かう。 「っ……」  大理石の廊下は血の海だった。廊下の両端には騎士達の死体。オリヴィアは数名の騎士に見覚えがあった。副団長ジハードの直属騎士、と。 「まさか!」  オリヴィアは走って広間へと向かう。広間には見慣れた騎士の背中が見えた。 「ジハード副団長っ!」  副団長である金髪の美丈夫ジハード。ゆっくりとジハードはオリヴィアの方を振り向いた。 「オリヴィア……貴女に、騎士団……を……」  スローモーションで鮮明にオリヴィアの頭に、ジハードが血を吐いて倒れる姿が刻まれた。ジハードの前に居たのはルージュの父・ナシェル。
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