#02 カミーリア女王国

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 ナシェルはジハードを突き刺していた。剣先からはジハードの血が垂れている。カミーリア騎士団トップが死に、士気も乱れ始めている状況に更に追い討ちが掛かる。 「オリヴィアか。よく来た」 「ナシェルさん……何でこんな事!」 「ルージュには荷が重い。それにこのカミーリアは新しく生まれ変わるのだ! なぁオリヴィア……君にも分かるだろう? 古い規則に縛れたこの国を一緒に変えようじゃないか」 「ナシェルさん。悪いけど私はルージュの味方」 「残念だ。ならば君もジハードのように……死ね」  ナシェルはオリヴィアに剣を向ける。オリヴィアは抜刀するとナシェルに斬り掛かる。 「俺が王だ! 議会長などで終わる器ではないッ!」 「くっ……!」  オリヴィアの頬を剣が掠め、血が流れた。ギリギリで避けたオリヴィアは、ナシェルの鳩尾を思い切り蹴る。宙を浮いたナシェルはそのまま吹き飛ばされた。 「ナシェルさん貴方1人の暴動が、一体何人を犠牲にしていると思ってるのですか! それでも貴方は……っ」  聞く耳も持たないナシェルの様子に、オリヴィアは浅く溜め息を吐いた。軍師的な地位に居たジハードも多分ナシェルを説得していたに違いないと思い、オリヴィアは叢雲の刃を立ち上がろうとするナシェルに突き付ける。 「風よ……我が行く手を阻む者を切り裂け!」 「……!?」  降参すると予想していたオリヴィア。しかしナシェルは風魔法を所持していた。ナシェルの翳した手を合図に、風が鎧を貫通してオリヴィアの身体を切り刻む。 「くっ……」  オリヴィアは床に倒れ込み、全身からは傷は浅いが、出血箇所が多く床に血が付着する。切り刻まれた身体は立つ力さえ与えてはくれなかった。 「残念だ。ルージュには悪いが此処でお別れだ……」  ナシェルは俯せに倒れているオリヴィアの髪を掴み、剣を振り上げた。
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