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「ヴィエルジェ様!」
「サジテリアス卿? どうしたの血相変えて……」
「スコルピオス卿が……!」
「何ですってオリヴィアが重症!? 直ぐに行かなきゃ!」
救護班のテントに入ったロランに視線を移したのは黒髪の美女。重症と勝手に解釈した美女は急いでオリヴィアのテントへ向かって行った。
「流石幼馴染み。と、言うかスコルピオス卿命なんだなヴィエルジェ様」
残されたロランは自分で納得し、頷きながら見送る。
一方救護班の美女は、オリヴィアが居るテントにいきなり入り込んだ。
「オリヴィア……!」
オリヴィアが椅子に座って辛そうに机に肘を付いている姿と、血だらけの鎧を外す白髪の少女の姿があった。
「クリス……? っ……」
「すみません、代わってください」
「あ、はい」
クリスと呼ばれた救護班に所属する美女は、少女と交代すると目を閉じて手を翳して力を集中し、暫くするとオリヴィアを眩い光の帯が包み込む。光の帯は、あっと言う間にオリヴィアの傷を塞いでいた。
「オリヴィア、大丈夫?」
「クロス村にクリスが居てくれて助かった……。ありがとう。えっと、それから……」
オリヴィアは少し身体を重そうに起こすが、完治した傷を見てクリスにお礼を言うと、少女に向き直るが名前が分からず言葉を詰まらせた。
「サラ・イクテュエスです。クロス村村長の娘でした」
「サラ……。ご家族は?」
「皆、ナシェル元議会長様に」
「そうか。じゃあ後を継ぐつもりで?」
「いえ。私……騎士になります」
「「え?」」
白髪のサラ・イクテュエス。オリヴィアとクリスは意外な返答に驚きを隠せない。剣も持ったことの無いか細い少女が仕官すると。
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