#02 カミーリア女王国

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「スコルピオス様やヴィエルジェ様……騎士団でも有名なお2人を間近で拝見し、決めました。私は士官学校に行きます」 「凄い意志の持ち主ね。もしかしたらオリヴィア越されちゃうかもよ?」 「そりゃマズいな。あー……でもクロス村から通うの大変じゃない?」 「オリヴィアの家、無駄に広いでしょうが。どうせあのスコルピオス邸1人で住んでるならサラちゃんくらい養ってあげたら? それに勉強なら私が教える事だって出来るじゃない」  オリヴィアは両親の遺産として館を引き受けていた。部屋の空きはクリスが言うようにあるし、1人くらい増えても別に差し支えないくらいな豪邸だった。 「うん、そうだね。取り敢えず団長・副団長が亡くなった今、騎士団の士気復興が最優先。少ししたらまた迎えにくるよ」 「は、はい! ありがとうございます!」  サラの元気良い返事に、オリヴィアもクリスも笑顔になった。一旦サラは村復興に尽力する事となり、父親以上の指導力を持っていた。  オリヴィア達は陣営を撤去し、リヴィア城へ馬を進める。たった1人の行動が、国を揺るがす大惨事となる。オリヴィアはその怖さを知った。死に際のジハードの笑みが浮かんでくると、自然と涙が溢れ出た。 『ただ目の前の事を信じてはなりません。自分が感じた事を信じなさい。オリヴィア、貴女の成長楽しみにしていますよ』 『お前には俺を越えてもらわねばな。女だからと言って批判するようなバカ共を見返してやれ』 「オリヴィア……」 「ギルバート様とジハード様から私は沢山の事を……いや、まだまだ学びたかったのに、どうして」  オリヴィアの唇は小刻みに震え、一度に心の支えを失った胸の隙間に冷たい風が吹いているようだった。 「オリヴィア、顔を上げなさい。貴女にはこれから背負わなきゃならないものが沢山ある。ほら」  顔を上げてクリスを見ると、リヴィア城の方を向くよう人差し指が誘導した。城外の空中に架かる橋の通路の真ん中に、ルージュが立っていた。 「オリヴィア……!」 「ルージュ!? 何で此処に……」  オリヴィアとクリスは馬を止めて降りる。ルージュは女王らしく、着飾った衣装も関係無しに、傷は癒えたが血だらけのオリヴィアを抱き締める。 「報告は聞いた。私は貴女まで失ったら……一体この先誰を信じれば良いのか分からないから不安で、怖かった」
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