#02 カミーリア女王国

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「オリヴィア。貴女の凱旋、皆が待っているわ」  ルージュに手を引かれたオリヴィアは、リヴィア城内に入る。続いて2頭の馬を連れてクリスが入る。 「「オリヴィア・スコルピオス様、万歳!」」 「「スコルピオス様!」」 「こ、これは……?」  賛否両論だった民達・騎士・評議会の全員が盛大にオリヴィアを迎えた。あまりの歓声に驚きを隠せない。中央広間まで絶えることない声援。ルージュが高台に登った瞬間、一斉に騒いでいた声援は静かになった。 「先のナシェル元議会長……我が父が起こした乱により騎士団ではギルバートとジハード……2人の英雄を亡くした。これにより、今この瞬間よりここに居るオリヴィア・スコルピオスをカミーリア騎士団長に任ずる! 異存ある者は申し出よ!」  異議を唱える者は誰一人として居なかった。歓声と拍手に沸くリヴィア城外。当のオリヴィア本人は唖然とした顔付きで居た。 「ほらボサッとしないの、早く!」  クリスはオリヴィアの背中をグッと押し、ルージュと同じ高台に立たせる。 「何か一言」 「ちょっと待って私はっ……」 「命令」 「う……そう言われると弱いなぁ」  ルージュもオリヴィアの背中に手を当てると、一面に居る人達の注目が集まっているのを感じた。 「私は団長達に……色んな事を教わった。成し遂げようとした志は、ただ1回の敗北によって捨ててはならない。挫折した時も同じ、と。騎士団の両翼を失った今、その意志を継ぐのは私などと、まだまだ未熟だが……私はカミーリア騎士団に、女王ルージュ様に忠誠を誓う!」 「「おおおぉぉっ!」」  騎士達は剣を高らかに天に掲げ、民衆から黄色い歓声と野太い声。議会から拍手。オリヴィアとルージュは手を振りながら声援に応えた。  陽暦422年秋。此処に22歳の若さでカミーリア騎士団史上初、女性の騎士団長が誕生した。これは後の『騎士団史書』にも記され、後世まで語り継がれる事となる。
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