#02 カミーリア女王国

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 陽暦422年冬。雪の降る白銀の世界。風車村と別名を持つクロス村の風車も、田畑も一面真っ白だった。  青毛馬に乗りながら漆黒の鎧に身を包んだ1人の騎士。オリヴィア・スコルピオス。 「ス、スコルピオス様!?」 「サラ、元気だったかな? 手紙に記した通り、迎えの騎士が参りましたよ」 「騎士団長になられてお忙しいのに……私の為に申し訳ございません」 「なに、騎士団はレオニール副団長に任せてある。それに私だってたまには息抜きしたいし……ね?」  16歳になったサラ・イクテュエスは幼さが抜け、騎士にするのは勿体無いくらいの美女に成長していた。 「士官学校は厳しい。クロス村に暫く帰れないから良く見ておきな」 「はい」  オリヴィアの馬に乗り、何時もより高い位置から見る故郷。白い世界が広がり、村が輝いて綺麗に映る。 「行くよ?」 「お願いします」  前に座るサラに後ろから声を掛けたオリヴィア。手綱を引いて方向転換すると、クロス村を背に馬を勢い良く出発させた。  新しく変わったカミーリア騎士団。それぞれが思い描く理想に向かい、切磋琢磨し、己自身を磨いて行く。  サラ・イクテュエス。後に彼女も『エフィシエント・ナイト』の称号を与えられる程の実力ある騎士へと成長して行く事となり、平穏を取り戻したカミーリア女王国を崩壊の危機にまで追い込む存在が現れようとは、まだ誰も知らなかった……。
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