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埼玉県下。県北西部の椿市。工業・農業共に盛んであり、自然環境に恵まれたこの地域に椿専門高等学校はある。
この学校は、市内唯一の専門学校であり、農業・語学・環境デザイン・伝統・工業・体育と、自分が得意とする分野を学ぶ事のできる学校である。
4クラスあり、文化生活科(A組)・デザイン科(B組)・機械科(C組)・体育科(D組)と分野が分かれている。
普通高校と違い、専門教科が学べるので椿市外から通う生徒も多い。定員数は各クラス40人。中退者が居なければ合計1学年160人。
敷地面積が広い椿専門高等学校。涼子と奈々は2年B組に進級した。新1年生達の姿も廊下で多く見掛けた。
「涼ちゃん! ごめん、私先帰る」
「了解」
新学期始めのホームルームが終わると、奈々は何やら急いだ様子で涼子に言って素早く昇降口に向かった。
涼子は快晴の空を見ると、少し笑みを浮かべてから学校近くの文化会館に寄ることにした。手荷物はあまり持たない涼子は、財布と携帯をブレザーのポケットに入れてある事を確認し、校舎を出た。
暫く歩いていくと、三角形の建物が印象的な施設が見えてくる。講演会やコンサートホールのある椿市総合文化会館。その中にある図書館に涼子は立ち寄った。
ローマ数字で表された本棚。目に付いたのは入り口から窓に沿うように大きな机が置かれている様子。手前から奥に6席あり、1番奥の6席目の窓際に座った。
静かな空間。少し開いた窓からは春の暖かい風が吹く。その間から、涼子の目の前に桜の花弁が舞ってきた。
ふと顔を上げると、そこには白銀の髪が印象的な美少女が立っていた。硝子細工のように繊細そうな雰囲気と周囲を魅了するオーラに、涼子は何処か懐かしさと親しみを感じた。
「前、宜しいですか?」
「あ……はい」
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