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「今も昔も……変わりませんね。とにかく説明は後にします。此処で少し待っていて下さい」
少女は綺麗な笑みを浮かべると、踵を返して森林の奥へと姿を消していった。涼子はただ、鎧姿の少女の後ろ姿を見ながらその場に立ち尽くした。
「私の名前を……? それに今も昔もって、どういう」
少女の言葉では過去の涼子を知っているような口振りであり、それが幼い頃なのかあるいはそれ以前の事なのか……。目の前の状況把握と同時に冷静な自分に気が付いた。
――バアアァン!
再び森林の奥から爆発音が聞こえ、木が倒れる音も微かにした。涼子は無意識にその場から駆け出そうとしていた。
「待ちなさい」
「……!」
涼子を制止させたのは洒落た洋風の装束を着た茶髪の若い女性だった。手甲を両手にしており、手にはフランベルジェといわれている刀身が波打つ剣を握っていた。
「オリヴィア・スコルピオス。いえ……まだ覚醒していないようね? 一番危険な貴女には死んでもらう」
「は……!? 何言って……」
女性は剣を構えて涼子に向かってきた。涼子は中学生時代、剣道部として活躍していた為、その感覚で素早く体捌きして右側に避けた。空振りされた剣は涼子後方の木を薙ぎ倒した。一般常識では考えられないような出来事。
「何だってんだっ……!」
「今度こそ私の邪魔はさせないっ!」
「っ!」
――ガキイイイィィン!
今度こそ確実に斬られる間合いと感じた涼子は、身を屈めた。目を伏せた瞬間に刃と刃が交わる音が響く。
「小娘えぇ……っ」
「鳳先輩には指一本触れさせない!」
そこに舞い降りた白銀の騎士。涼子は目の前の状況を素早く理解して守ってくれた少女の背中を見つめる。
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