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◇
静かに終話ボタンを押して、東城一魔は電話を壁に投げつけた。
精密機械であれ、最近のものは中々どうして丈夫だ。
派手に音を立てて転がっていったが壊れている様子は無い。
無事に現在時刻――午前一時を回ったところだ――を表示している。
「いっそ粉々に砕け散ってくれれば、憂さ晴らしになってくれたのに」
忌々しげに、一魔は暗い部屋に灯る液晶画面に向けて毒を吐いた。
それすら今の彼の憂さを晴らすことは無い。
より苛立ちを増してしまうばかりだ。
古西秋が消えた。
かつての部下である高松雄介からの報告は、まとめてしまえばおおよそこのような内容だった。
一魔と秋、『疾風迅雷』は、昨晩彼らの敵である『麒麟の右目』のアジトへと攻め込んだ。
そこで、一魔は敵幹部である“地将”江時を、秋は“火将”大辺を倒した。
完膚なきまでに叩きのめした。
正義が勝ち、悪は倒され、町には平和が訪れた。
だが、話はそれでは終わらない。
倒された大辺は捕縛され『月明かりの双杖』に引き渡されたが、目覚めてすぐにその場を脱し、そして隠し持っていたミサイルを撃った。
『麒麟の右目』は巨大な組織だ。
人数という面でも、経済的な面でも、その支配力が及ぶ大きさでも、巨大な、それこそ小さな島国程度では収まりきれないほどに。
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