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「……なあ、良ければ名乗ってくれないか。僕も、僕を殺したのが誰だったのか、なんていう格好の悪い未練でこの世に残りたくはないから、教えてほしいね」
「随分と余裕のある軽口ですね、東城一魔。本当に、殺したくなります」
不用意な言葉が襲撃者を刺激してしまったらしい。
ざくりざくり。
ざくりざくり。
言葉が鋭さを見せ、一魔へと突き立てられる。
徐々に削り取られるイメージが脳裏を埋めていく。
腕が、足が、体が、頭が。
貫かれていく。
貫かれていく。
貫かれていく。
少しでも動けばそれは現実になるだろう。
振り返ることも、恐れに身体を震わせることも出来ない。
このままやられるのか。
悔しさが脳裏を過ぎると、でも、と、背後の怒りは気配を潜めた。
身体を貫く感覚は一瞬にして消えた。
「今日は貴方を殺す為に来たんじゃないから、殺しません。私が来たのは、別の用事なんです」
「別の用事? 別の用事って、それは一体何なんだ――」
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