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振り返って、一魔は思わず動きを止める。
背中を刺す刃――苛立ち――が消えたところで油断してしまっていた。
安直に振り返りすぎた。
――まずい。
一瞬にしてどこかへやっていた警戒心が蘇える。
と、同時に。
驚愕した。
「女の……子?」
「なんですか?」
「あ、いや……」
襲撃者は女の子だった。
いや、声で性別が女性であることくらい初めから分かっていた。
分かっていたが。
まさか、襲撃者が小柄な、何処にでもいそうな可愛らしい女の子だったなんて。
目に入ってきたのは、本当に何処にでもいそうな女の子。
ただ普通と違うのは、煌くその姿。
窓から差し込んでくる月明かりのような銀糸の髪。
何物にも染まらぬ純白の肌。
ジッとしているだけで汗ばんでくるこの季節にそぐわない、その雪のような姿が。
一魔の言葉を詰まらせた。
仰天させられてしまった。
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