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「それを望んだ人がいて、それを肯定した人がいて。そうして、そこには幸せがあった」
はずだった、と彼女は続ける。
何も起こらなければ、その幸せは続いていたのに。
続いて、未来へと繋がっていく。
はずだった。
しかし、幸せは終わる。
その人が――『彼』が――古西秋が、気付かぬ間に。
「私が何物かと問いましたね。答えてあげましょう。私は、“白銀の女神”です」
「――なっ」
一魔は言葉を続けられない。
呆気にとられたから。
驚いたから。
だけど一番は、信じられなかったから。
「この辺りは敵である『麒麟の右目』の縄張りです。それなのに、どうしてこの春から『銀の賢者』が現れるようになったと思いますか?」
答えを待つように、“白銀の女神”は間を空ける。
一魔からの答えは無い。
女神は初めから答えなど期待していなかったのだろう、それは、とすんなり言葉を続ける。
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