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「彼がいたからです。古西秋が、『銀の賢者』において白虎になり得る資質を持った彼がこの学校にいたから、私は彼を見守る役目を負ってこの場に来たのです」
「……だったら、なぜ彼が大学に入る前からいなかった? 僕の記憶が正しければ、『銀の賢者』がこの町に来たのは、今君が言った通りだ。この春からだったはずだ」
天敵を狩るために、『麒麟の右目』も手を打っていた。
もちろん、元組織の小隊長である一魔もその情報は閲覧済みだ。
「そして小康状態にあった場を動かしたのは、君たちの方だったはずだ。組織はまだ動きがあるのでは、と疑っている状態に過ぎなかったのに、君たちはあの大きな黒犬を町に放った。本当に何がしたかったのか。当時もだったけど、僕の頭では答えには至らない。賢者殿は一体どういうおつもりだったのかな?」
「嫌味な口ぶりですね。でもまあ、簡単な話ですよ。あれは、注意をこちらへ向けるためだった。ただそれだけのことです。彼に『麒麟の右目』の視線を向けられないよう、注目はこちらに集め、少しだけ近寄った彼の運命を少しばかり遠ざけようとしたのです」
近寄ったとはなんだ?
問いかけるよりも、彼女が言葉を続ける方が早かった。
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