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「もしかしたら戦場から遠ざけるだけで良かったのかもしれません。遠く離れた場所にいてもらったら巻き込まずに済んだかもしれない。でも、あの人は台風みたいな人でしょう」
「……ああ」
「そして『麒麟の右目』は、衛星を打ち上げてその台風を発見することが出来る」
衛星、というのはこの国における組織の情報網の揶揄か。
平和的な意味でない情報網をそんな風に例えるなんて、全くの皮肉でしかない。
「なるほど。近くにあったのなら、その台風が自分達だって誤魔化すことが出来るんじゃないかって。あんたはそんな風に思ったわけだ」
「その通りです。でも、台風は貴方達に奪われてしまった」
また、視線が鋭くなる。
今度は鋭利の色ではなく、試すような色が見て取れる。
疑われているのか。
いや、確かめられているのか。
「なぜです?」
「なぜって、何がだ?」
「言うまでもなく、彼をこちら側へと引き入れてしまったことです。貴方達は、強ければ誰でも良かったはずです。むしろ、貴方はこの場所で、潜在的に組織に引き入れるに足る能力を秘めた人間を探していたはずです」
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