失踪

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ただ古西家を囲む塀が、左右と同じようにあるだけだった。 しかしそんな当たり前の光景の中に、この派手な男にはいたく感動する要素があったのだろう。 満足げに微笑みを浮かべている。 「……本当に、なんと素晴らしい。これが異界の女王の力、白い女神の魔法というわけですか」 イカイ? マホウ? 浅田は思わず首を捻った。 対テロで使っている隠語か何かだろうか。 新人刑事も同じように不思議そうな顔をしていた。 やはり一般的な言葉ではないのだろう。 観絶村は振り返り、浅田と視線を交わす。 「これより、古西宅跡は私達対テロが預かります。皆さんをここから撤収するよう、指示をしていただけますか? 浅田警部」 「撤収? 何をいきなり。俺達は上から命令でここに来ているんだぞ。いかにそっちが階級的に上だっていっても、はいそうですかって簡単に帰れるわけがないだろう」 「いいえ、帰っていただきますよ。ここからは、あなた方が入って来れる世界ではない」 ――――一度。 ただ一度、浅田は瞬きをした。 その間に、彼の眼前には光るものが現れていた。 そこにあった。 人を殺すことの出来る、鋭利な凶器が。
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