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突き刺すような視線を一度だけ投げて、新人刑事は立ち去った。
恐らくは他の同僚と車へと乗り込んでいくのだろう。
怒りに震える背中を見送って、ぽつりと呟く。
「若いってのは、無謀でいけねえな」
「年を取るということが良いことというわけでもないでしょう」
だな、と浅田は苦い笑みを浮かべた。
この男は丁寧な口調で容赦なく痛いところを断ってくる。
「彼はあなたが気付いていないことに気付かなかったようですね」
「あいつは真っ直ぐだが、変に自分を低く見るところがある。洞察力なんかは歳を取って偏っちまってる俺なんかよりもあるくせに、それが当然なんだって思っちまっててよ」
浅田はもう一度、観絶村が指差した場所を見た。
右を、左を、そして正面を。
「何も無くなってるってことと、対テロのお前さんが来たってことでここでは爆発があったんだと思い込んでいた。何か不可思議なことが起こっているなんて思いもしなかった」
どこもかしこも綺麗に削り取られているだけ。
すすの跡すら見つけることが出来ない。
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