失踪

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「それに、こんなに大きなクレーターなのに図ったように家の敷地内に収まっている。これは誰かがそうなるように仕組んだとしか思えない」 つまり、このクレーターは人為的に作られたもの。 そう、あの若い刑事の言葉は告げていたのだ。 誰かの企みが、この町の住民を脅かすのだと。 「こんなことも分からないようじゃ刑事失格だな」 「いえ、引き際というものを弁えている内は平気でしょう。あなたは優秀な刑事ですよ」 「使い勝手が良い、っていう点ではな」 「部下を守ることが出来るという点で、ですよ。私は常に部下を危険に晒していますから」 あなたが羨ましい。 最後まで口にはしなかったが、表情はそう語っていた。 だが恐らくは、危険に晒さねばならないのだろう。 部下に強いることで心を痛めていても、それ以外を彼は選ばないのだろうから。 「そうか」 ただ、危険に巻き込まずに済む人間は徹底的に追い出す。 容赦なく、例え忌み嫌われても関係なく。 彼はそうやって、自分の正義を守ってきたのだろう。 ならばこれ以上の言葉は必要ないだろう。 自分も同じように部下の命を守ろうとしているのだから。
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