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「ねぇねぇー、銀狼の毛って高く売れるかなぁ?」
屈みながら死体をツンツンするリリー。俺は戦いで放り出されていた、さっきの毛布を拾いながら言う。
「やめとけ。次に人間に会うのはいつになるかわかんねぇんだ。毛なんて持ち歩いてたら、匂いでまた魔物が寄ってくる」
リリーは残念そうに立ち上がる。
「んー。高く売れると思ったんだけどなぁー」
「はいはい。それより、早いとこ此処から離れんぞ。もう、魔物はごめんだ」
「えー。少しは休ま……ゾルド後ろ!」
リリーが突然目を見開き、俺の背後を指差した。ただならぬ気配を感じた俺は、ソウルイーターを背中から引き抜き、振り向きざまの勢いで一閃した。柔らかい肉の感触が刃から伝わってくる。
「チッ……」
両断されたシルバーウルフを見て思わず舌打ちがでた。シルバーウルフの死体から、銀色の魂がフワフワと漂う。
今度はそれがソウルイーターに吸収された。
「ゾルド……」
リリーが固唾を呑んで見守っているのが、痛い程感じる。
バリバリバリ……
ソウルイーターから骨を砕くような音。聞くだけで寒気がした。ソウルイーター……魂を喰らう剣。
殺した生き物の魂を喰らうことで、この剣は固く、鋭く、強くなっていく魔剣。『七冥剣』の中でも異質。魂を喰らい成長するのがソウルイーターの特徴だ。
それだけならいい。俺が殺生をしない理由はこんなことじゃない。ほら……きた。
ソウルイーターからシルバーウルフの魂が、僅かに流れ込んできた。
ソウルイーターが喰いきれなかったシルバーウルフの魂が、俺の魂を乗っ取ろうとする……
しかし、俺はそれを精神力で食い止める。
「ハァハァ……」
「大丈夫?ゾルド?」
「ああ……」
これが俺が殺生をしない理由。殺した相手の魂の残骸が、俺の魂を乗っ取ろうとする。それだけじゃない。
その場しのぎで、精神力で抑えこんだとしても、その魂は俺の体内に残留思念として生き続ける。
いつか体を乗っ取ろうと待ち構えてんだ。だから、俺が無闇やたらに殺しをすれば、殺した奴らの魂が俺の体内で一つになり、やがては俺の精神力をも凌駕して、俺は完全に自我を失うってわけ……
少なくとも前のソウルイーターの持ち主はそうだった……
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