絶望の中の光

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でも、一つだけいい点がある。それは魂に含まれている身体能力や、魔力を奪えることだ。 奪えるって言ってもソウルイーターの食べ残し。完全な魂でないため、急激な身体能力の増加や魔力の増加は望めない。 つまり、俺が精神力で抑えこんだ魂は、俺の身体能力や魔力に微量だが上乗せされる。 しかし、この力はリスクしか生まない。殺した相手の力を奪えるとしても、結局は俺の体に魂の残骸を増やすだけ…… 普通は一つの体に魂は一つ。しかし、俺の体には既に何十もの魂がひしめき合ってるんだ。 これ以上、魂を増やす訳にはいかない。自我を失って誰かを傷つけるのは、死ぬより怖い…… 俺は隣りの少女に目をやる。綺麗な金髪がすぐ隣りにあった。 「おちついた?」 背中をさすってくれているリリーに笑みで答える。 「もう平気だ。さてと!さっさとずらかるぞ」 一瞬、ほんの一瞬リリーは心配気な目で俺を見た。夕日を背にしているため、リリーの顔は、はっきり見えないけど、たぶん泣いてるのかな? リリーは頬を拭って言う。 「うん」 俺は右手に毛布、左手にシルバーウルフの死体一匹を持つと、歩き始めた。 何だか今は、毛布の方が重く感じる。そんな気がした。 それから街を徘徊し、やっと落ち着いた俺達は、さっきのシルバーウルフを食べていた。勿論、火は通してある。あらかた食べ終わったリリーが唐突に言った。 「最近さ、人間見なくなったよね。ほんとにさぁー、レジスタンスの国なんてあるのかなぁ?」 最後にリリー以外の人を見たのは1ヶ月くらい前だ。今の俺達の目的地は、このサブナル大陸の北にある、反魔王のレジスタンスで形成され国だ。そこに目当ての物があると俺達は考えていた。 「師匠が言ってたろ?サブナル大陸の北には、生き残った人達の国があるって」 「でもさぁ、北は目指してるけどぉ、一向に着かないじゃん。手掛かりもないし……」 確かに俺達には諦めムードが漂ってる。師匠の言葉を思い出したのが2ヶ月前……それからはただひたすら北を目指しているが、当然到着はしていない。 「今は師匠の言葉を信じるしかねぇよ。どうせ他に『七冥剣』の所持者が居そうな場所は、検討すらつかないんだからな」 「そもそも、師匠の『七冥剣』の話しが嘘っぽいよぉ。ゾルドは七本集めてどうするつもり?」
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