絶望の中の光

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「冗談だ。今日は持ってやるよ」 「さすがゾルドだねぇ!うんうん!今日はリリーちゃんがご飯つくって――」 「いやそれはいい」 俺は右手を突きつけて制する。リリーは食材を焼くという行程も、ままならない。 「むむ……」 「まぁどうせ明後日には山を超えることになるからな。今から疲れてもらっちゃ困る」 俺は前方に霞んで見える山を指差した。 「むむむ!あんな山のぼるの!?」 ここから眺めても天を突くのではないか、と思ってしまう程の標高にリリーの腰はさらに湾曲してやがる。 「リリー、これを見ろ」 小学校の遠足に持って行っても、なんら可笑しくはないピンクのリュックから地図を取り出す。 「三年前の地図によるとだ。あの山は確実にカラクス山脈だ。山脈は、この大陸をちょうど二分してる。それだけに道は険しい。 でもな、この印を見てみろ」 地図についているバッテンを差す。 「これなにぃ?」 知らないと思ってたよ。俺だって地図の読み方を、師匠に教えてもらってなかったら知らなかったろうな。 「これは採掘場に付けられる記号だ。この意味わかるか?」 「うむうむ。鉱山には坑道がつきもの。ゾルドは坑道を通って、山脈の反対側に出るって考えてるわけだ!」 リリーにしては良い考察だ。俺は笑顔で答える。 「ただし気は抜くなよ?おそらく坑道は狭い。そんなとこじゃ、魔法なんて使えないからな。魔物の住みかになってても、ソウルイーターとピュアレイドに頼るしかなくなる」 そうは言っても俺は、殺しはしない。つまりはリリーを頼ることになる。それはリリーも百も承知だ。 「任せて任せて!私の華麗な剣捌きで、魔物なんてやっつけちゃうから!」 頼もしい。世界一頼もしい奴だよ。こいつに剣術や、魔法で勝てる奴なんて、この世に数えるくらいしか居ねぇだろうよ。 「さてと、早いとこ歩くぞ。もたもたしてると日が暮れちまう」
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