18人が本棚に入れています
本棚に追加
同じ光景をひたすら歩くってのは気が滅入る。腐敗した荒野を山を目印に歩く俺達は、徐々に大きくなるその山を見据えてただ歩いてた。
俺が異変に気付いたのは、夕焼けで地面が赤くなり始めた頃だ。
「くそ……血の匂いがプンプンしやがる」
昨日取り込んだシルバーウルフの魂。そいつの能力で俺の鼻は、約5キロ先くらいの匂いを嗅ぎ分けられるようになった。
そのせいで朝から頭が痛む。新しく取り込んだ魂の制御は難しい。例えば、俺のキャパシティを棚とする。
棚には沢山の引き出しがあって、俺はいつも殺した奴らの魂をその引き出しに閉まってる。その引き出しに魂を入れられなくなったら、俺は自我を失うんだけどな……
取り扱いずそうすることで、魂を制御し、使いたいときに力を引き出しから出せばいいのだが、新入りは違う。
まだ俺の体にシルバーウルフの魂が馴染めていないからか、能力が解放状態になっちまう。
だから俺は、効き過ぎる鼻に嫌気がさしてた。
「血の匂い?どっちから?」
「このまま進めば、たぶん村がある。そこからだ」
「むむ……なんで村だってわかるのぉ?それに目を魔力強化したけど何にも見えないよ」
リリーはどうやら魔力で視力を上げたらしい。
「なら、鼻に魔力を集めてみろ……血の血の匂いに混じって、食べ物の匂いもするから」
取り込んだ魂の能力は、もはや俺の力だから魔力の使用は皆無。まぁ、例外もあるけどな。
だから、リリーのように一々魔力を消費しなくてもいいのが強みだ。
「うえー!本当だ……くしゃー!」
リリーは鼻をつまみながら言った。
「たぶん目視できないのは、結界魔法か……それに魔物に感知されないように、魔力も隠してやがる」
「どうするのぉ?行ってみる?」
血が気になる。この匂いは人間の血だ。厄介事は避けたいけど、水や食料の補給もしたい……
最初のコメントを投稿しよう!