絶望の中の光

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「気は進まないけど行ってみる価値はあるな。もしかしたら、冥剣についての情報があるかもしれないし」 「てことは久しぶりにゾルド以外の人と話せるね!」 リリーはそこら中を跳び回って喜んでる。ほんとに餓鬼だよ。それでもこいつと居れば安らげる。笑っていられるのも事実だけどな。 「今日中に到着してもいいけど、夜になりそうだから今日はここで野宿だ」 リリーの飛び跳ねがピタリと止む。 「なんでさ!なんでさ!早いに越したことはないよぉ!」 そんなのはお構いなしに俺は毛布を引っ張っりだす。 「こんな時代だ。見ず知らずの、赤の他人がいきなり村に入ってくるんだぞ?しかも、魔物避けとは言え結界まで張ってる封鎖的な村だ。 そんな村にいきなりお邪魔します!なんて訳にはいかないだろうが。夜より昼間の方がイメージはいい」 「え?なに?印象の問題なのぉ?」 それに始めはいい顔で迎え入れて、後から金品や生活品を盗むなんて輩は、この世界に五万といる。 そんな時代なんだ。物資も食料も限られてて、知恵と力だけがものを言う世界だ。 少なくとも三年前からだが……世界は変わった。信用なんて言葉は死んだんだ。出会う奴らは全て敵。前の村でもリリーがさらわれそうになった。そんで俺は殺されるところだった…… でも、リリーは一切そんなことは気にしていない。こいつはすぐに人を信じる馬鹿だから。 どんな嫌なことがあっても、リリーは他人を疑わないんだ。 だから、前の村なんか忘れて次の村に行こうとする。人が好きだからだろうな。 「どうしたのゾルド?黙っちゃって」 お前考えてた。なんて言えないな。 「いいか。村の奴らを信用するな。お前の悪い癖だからな?」 「うんうん。しないよぉ。悪い奴がいたらやっつける!」 「いや!問題は起こすなよ!人助けもなしだ」 「え―血の匂いがするなんて事件の匂いじゃん」 俺は毛布の上に寝込んで、携帯していた食料を食べる。今日の飯はビスケット2枚だ。 「事件に巻き込まれんのはもう沢山だ。そうやって厄介事に首を突っ込んでたら、いくら命があっても足りねーよ」 「むむー。使えない助手だなぁ!事件は名探偵リリーが解決するんだから!」 「ふ……体は大人、頭脳は子供だな」
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