18人が本棚に入れています
本棚に追加
「なにそれぇ?ひどくない?」
リリーは、すねたのかビスケットを乱雑に口内に突っ込むと、俺に背を向けて寝床につく。
「わりぃわりぃ。明日の出発は朝早くな。俺は見張りすっから、リリーは寝ろ」
「言われなくても寝るもんね」
そこは見張り変わろうか?とかじゃないの?別にいいんだけどな。見張りって言えばかっこいいけど、結局俺がしたいのは星を見ることだから。
ただ寝そべって夜空を眺める。この景色は変わらない。
移り変わる人の心とか、破壊されて見る陰もなくなっちまった街とかと違って、宇宙が生まれて今まで誰に邪魔されずに輝いてる。
まるで誰かさんみてぇだ。でも、到底俺にはできない。
本当の俺は力が欲しくてたまらないんだ。ソウルイーターで敵を八つ裂きにして、そいつの力を奪ってやりたい……
それに最近、無性に殺意が沸くのは何でだ?自分で決めた筈の不殺生は、力への欲望で簡単に破ってしまえる。
昨日だって、心の中じゃシルバーウルフを殺せて嬉しいと思った。
これで強くなれるって……シルバーウルフの魂の断片が俺に流れてきたときも、充実感が俺を支配してた。
何かを殺して力を得て、挙げ句の果てにはそれに満足する。そんな奴に俺はなってきてる。
いや……元がそうだったのか?今じゃもうわからない。最低の人間だ、俺。
魔物との共存が不可能なのは、歴史が物語ってる。魔物は殺人衝動の塊だ。自分と同種以外の生き物を見境なく殺す。
それでも魔物だって生きてる。俺は、魔物は殺して当然と思ってる自分が怖い。
それでも、生きるため。殺らなきゃ殺られる。そう脳みそに刷り込んでんだ。
自分を蔑みながらも俺は、村があると思われる方から漂っていた血の匂いが、消えたのを今になって気がついた……
最初のコメントを投稿しよう!