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とある湖に俺達はいた。
刃から滴る血。俺は手を真っ赤に染めていた。
右手には刃物、左手にはそいつの首もとを掴んでいる。
思わず嗚咽が漏れだす。目の前の死体を、俺は更に刃物で切り刻む。
そんな残酷な光景に似つかない、可愛いらしい声が耳に入ってきた。
「ねぇ~まだ?お腹空いちゃったよぉ!」
俺は声の主に顔を向ける。そこには金髪に、女にしては長身の少女?まぁ、18歳だけどな。
名前は、リリー=エバンス。
俺が少女って言ったのは中身のこと。容姿は完璧、出るとこは出てるし顔なんて申し分ないくらい綺麗だ。
しかし、俺はこいつを異性としては見ていない。旅を始めて3年間、一度もだ。と、言うより見れない。一緒に居ればわかるよ。
もう一度言うかな。リリーは中身がガキだからだ。
「うるせぇ!ちょっとは手伝えよ!」
「やだぁー。今日の夕飯の当番はゾルドでしょぉー。」
思わず右手に握っていた包丁を、投げつけたくなる衝動に駆られた。
しかし、そこは我慢する俺。
いつものことだと自分に言い聞かせる。3年間の旅でリリーが夕飯の当番……いや、朝食すらも作った試しはないからな。
包丁を投げつけるかわりに、俺が左手で抑えていた巨大な魚の頭は、奇怪な音を立てて潰れた。
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