不可解な村

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俺達が例の村に到着したのは、昼頃。雲が空を覆って、今にも泣き始めそうだ。 「ここが匂いの出どころだけど、どうやらそう簡単には入れないな」 俺の体にシルバーウルフの魂が馴染み、能力を完全に制御可能になった鼻を、犬みたいにピクつかせる。 「すみませーん!悪い者じゃないでーす。お邪魔させておくんなましー!」 「頼むから止めろ。怪しいさマックスだ」 「えー。礼儀は重んじるべきだよ。まずは挨拶で相手の警戒心を削いで、油断させて、気を緩ませたところを攻めなきゃ」 「おいおい。なんの話しだよ?完全にこそ泥みたいに聞こえんぞ」 俺はため息をつきながら結界を二度と叩く。強度的には問題ない。勿論、破壊するって意味でな。 「開けー……ごま!」 しかし、強度はかなりのもんだ。これならもし、俺達みたいに匂いで村の存在に気がついた奴らがいても、突破するのは楽じゃねぇな。 「私は南方から来た神なり!」 不可視の魔法、魔法結界の二重発動に加えて内側からの消音魔法か……なんて手が込んでやがんだ。 でも、そこまでしないとこの時代では生きられないのも事実だ。 「壊すよ!?リリーちゃん怒るよ!?」 「だぁ!!うるせぇ!!さっきからなに意味わかんねぇこと言ってんだ!!」 「だってさだってさ!反応ないんだもん!こんなか弱い娘を村に入れないとか!そりゃないっすよ!」 ちょこちょことキャラ変えやがって。こいつは生粋の馬鹿だ。そんなことしてたら逆に怪しまれるっつうの。 「よし、諦めんぞ」 「えっ?やだぁやだぁ!」 俺は駄々をこねるリリーの首根っこを掴むと、無理やり引きずって歩きだした。 そん時だ 「待てよい。お前ら何者でい?」 結界から緑の髪で長身の若い男が現れた。腰にある剣の柄を握ってることから、警戒はされてるみたいだ。 しかし、こいつ……血の匂いがプンプンしやがる。魔物の血に混じって、人間の血の匂いも…… 「俺達は旅の者だ。良かったら水や食料を分けてもらいたい」 「どうやって此処がわかった?」 俺の話しそっちのけで、男は静かに言った。俺は敵意のないことを示すため、両手を上げる。その際リリーは地面に落ちた。 「匂いだ。俺は鼻がよくてな。この村の匂いを辿ってきた」 血のことは敢えて言わない。男は困惑した表情をした後、柄から手を引く。 「待ってろい」
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