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「待ってろってことは入れてくれるのかなぁ?」
「さぁな。それより、あの緑頭には気ぃつけろよ?あの血の匂い……かなり返り血浴びてやがる。体に匂いが染み付いてた」
「じゃ血の匂いの原因はあの人かな?悪い人には見えなかったけど……」
「顔で判断するな。それにあの腰の剣……」
あの魔を帯びたというか、独特の雰囲気。ソウルイーターと同じ感覚からして、恐らく……
「うん。魔剣だね。それも結構な」
しれっとした顔で、リリーは言った。まるで関心がないみたいだ。
肩まである金髪が強くなびいた。風が強くなってきた。こりゃ、一雨くるな。
「冥剣だと思うか?」
俺は立ち込める雨雲を仰ぎ見ながら言った。返答に期待はしていない。
「違う違う。あんなんじゃ、七冥剣の足元にも及ばないよぉー」
「だよ……な。はぁ、こんな村にあるわけねぇよな。まぁ、あの血の匂いに魔剣となると、あいつが要注意人物なのは変わりねぇ」
ポツリポツリと地面に黒い染みができてきた。リリーがどうにかして手で、頭に降ってきた雨粒を防ごうとする。
「ひゃー!降ってきたよ!」
そう言いながらも楽しんでるように見える。俺はうっとうしいハエを払うように、髪の雨粒をほろった。
「待たせよい。さぁ、土砂降りになる前にこっちへ」
結界から顔を覗かせたさっきの男は、手でこっちに来いと招いている。
俺とリリーは顔を見合わせた。まさか、本当に入れるなんてな。
「すまない」
ボソッと言った俺は、村に足を踏み入れた。継いでリリーも村の地を踏む。
「ありがとうございます!えー、っと……」
リリーは顎を人差し指で抑え、男の顔をジロジロ見てる。
「あ、名前かよい?俺の名前は、へルガ=ネルファーニだよい」
そんなリリーに男は落ちた声で言った。
「私はリリー=エバンス!んで、こっちが――」
「ゾルド=アーカムだ。何故、俺達を村に入れた?」
俺は敢えて素っ気なく、淡白に言う。こいつは信用ならない。それに男は笑う。そこに悪意は感じられない。
「お前達二人が入りたいって言ったんだよい?」
確かにそうだが、あんなに警戒していたこいつが、まるで手のひらを返すような態度が引っかかる。
「それもそうだ。すまないな。こんな時代だ、誰でも疑ってしまう癖があるんだ」
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