不可解な村

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「ちょうど2ヶ月前程から、この村……名はモドュブと言うんだが、若い娘を狙った殺人が起きているんだ……ゴホ……それも決まって夜に、いつも死体は朝見つかるんだが、心蔵を何か細長い物でひと突きされているんだ。 そのせいで村人たちは夜も出歩かないし、保身のためか殺人を魔物のせいと決めつけている……ゴホ……モドュブには魔物は入れないと知っているのに……」 「つまり、殺人事件を解決してくれってか。無理だ」 俺はきっぱりと突き放した。リリーをチラリと見る……かぁー、今に言い出すぞ……助けて上げようってな。 「ねぇねぇゾルド……助けて上げよう?」 リリーは猫が餌をねだるように言ってきた。 「村に入る前に言っただろ?人助けは無しだ。もうこれ以上、目立ちたくない」 ネグスは立ち上がると、おぼつかない足取りで近寄ってきた。そして、俺達の目の前に立つと深く頭を下げる。 近くで見ると、髪は病的に白い。多分、ネグスは一日中結界に魔力を削いでいるんだろう。 そのせいで疲労が蓄積し、体は弱ってんだろう。こんな殺人も解決しない村人を助ける意味がどこにある? 結局、自分が可愛いんだ。だから、人任せにする。自分達を結界で守ってくれているネグスが弱っていようとも、問題を解決しようともしない。 「頼む!私はこの通りの体だ。殺人を解決しようにも、立つのが精一杯……結界の保持に、魔力を村の人達から供給して貰ってもこの様だ。 君達の欲しいものなら何でもやる!頼む!」 ネグスの震えが俺に伝わってきた。流石の俺も、これには動くものがある。 「何でもと言ったな?ならネグス、あんたの命だ」 「なっ……!ちょっとゾルド!!」 「いいだろう」 こいつ……即答しやがった。俺には他人のために命なんて賭けれない。それをこいつは、一切の迷い無い眼でいいやがった。 「その価値がこの村にあんのかよ?」 「ある。ゴホ……私一人の命なぞ、くれる価値はある。人が死ぬのはもう沢山だ!」 「お前が死ねば結界も無くなるんだぞ?そうなったら村は全滅だ。それを考えて言ってんのか!?」 ネグスはゆっくりと頷いた。 「私にはわかる。君は私たちを見捨てはしない」
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