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この心を見透かすような言い方。気にくわねぇが……
「なら条件がある。このリュック一杯の食料と水だ。それだけでいい」
ネグスのさっきまで死んでいた目は、一気に輝きを取り戻した。
「本当にそれだけでいいのか!?」
「ああ。食い物には命を賭ける意味があるからな。それと俺は、無駄な殺しはしない。まぁ、殺人犯は場合によっちゃ殺すかもな」
「ゾルドそれって!遠回しにネグスさんを殺さないって言いたいんだよね?」
「あれは冗談だよ。ネグスを試したかったんだ。あんたの熱意に負けたよ」
俺はネグスに手を差し出す。ネグスは顔をクシャクシャにして笑うと、俺の手を強く握ってきた。
冷たい。でも、そこには確かな温もりがあった。久々だ、こんな奴と会うのは……自分の命が脅かされたとき、人は本性を現す。
この、いつ死ぬかわからない時代に自分よりも他人。そんな考えをできるネグスだからこそ、俺は助けてやろうと思った。
「ゴホ……ヘルガ。入ってきてくれ」
俺達を案内した男の名を叫ぶ。直ぐに入り口の扉が開いた。ヘルガにはシルバーウルフの鼻で、存在には気付いていた。
「なんだよい?って……!座ってなきゃだめだよい!」
立ちながら握手する俺達を見るなり、ヘルガは慌ててネグスを座らせた。
「ごめん。つい話しに熱がこもってしまってな」
「お前はこの前も倒れた!できるだけ安静してるんだよい!」
まるで子を叱る母といった感じか。ヘルガは腰に手を当てて説教をしている。
ネグスは笑いながら聞いていた。
「二人とも仲がいいんですねぇ」
リリーがのほほんと言った。右手にはどこから出したのか、コップで水を飲んでいる。
「ヘルガとは長い付き合いだからね。この村も最初は私とヘルガ、それにアマンダっていうヘルガの妹と作ったんだ」
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