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「ああ!せっかく苦労して捕まえ魚がぁ―!」
今にも泣き出しそうな瞳で俺を睨み付けるリリー。
腹が立つ。
そもそも捕まえたのは俺だ。わざわざ目の前の湖に飛び込んで、調達したのがこの魚。
それを自分の手柄みたく言いやがって!俺は怒鳴り声を上げた。
「ふざけんな!お前との旅なんてもう懲り懲りだ!
俺達は今から別行動。ここでお別れだ!」
唖然とするリリーに背を向ける俺。
してやった。これでおさらば。後は自由に生きるだ……け?
去ろうとする俺の背後から、子猫みたいな鳴き声が……
まさに後ろ髪を引かれる思い。
だがここで振りかえれば、全ては水の泡だ。
つまりは俺の負け。更に俺は一歩踏み出した。しかし、それ以上、前進できない……
「ゾルドぉ……ゾルドぉ!」
か細いリリーの声に耐えきれずに俺は、振り向いた。そして、リリーに近づいて一言、
「リリー……悪かった。言い過ぎたよ。」
心の底からの謝罪。それに答えるかのようにリリーは顔を上げた。
その頬には涙のあと……は無い。
「ゾルドお腹すいた。」
俺は悟った。こいつは俺が居なくなるから泣いていたんじゃない。
いや、そもそも嘘泣きだし……
飯の為に俺を引き止めたんだな。
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