18人が本棚に入れています
本棚に追加
目的のために歩く。それが今の俺達に出来る最善の行動だ。しかし……
「ねぇ~、そろそろ休もうよぉ~」
リリーの体は限界みたいだ。こいつだって女だ。こんな廃墟と化し、元は街だった痕跡があるところを、何時間も瓦礫を登っては降りを繰り返せば、疲れなんて直ぐに襲ってくる。
「そうだな。今日はここまでにしよう。久々の街だ。何か使える物が残ってるかもしれない」
自らを魔王と名乗る男に世界が壊されて、もう5年の月日が流れた。
それからは人間は物資の大切さを学んだ。
忘れかけていた物の大切さを……皮肉なもんだよ。
この名も知らない街もその被害にあったのは明白だ。
「え~……そう言って見つかったこと殆どないじゃん!もう誰かに取られてるよ」
リリーは積み上がった瓦礫の山の頂上から言った。
「あきらめんなよ。瓦礫に埋もれてるかもしんないだろ。宝探し感覚で探せ」
「宝探しね。うん……イイ響き!なら、宝は見つけた方がいただくという方向で!とうっ!」
それだけ言い残しリリーは瓦礫から飛び降りて姿を消した。
本当にガキだ。
俺も宝探しを始めるため、歩きだそうとする。
「いたいー!」
直ぐに後ろから叫び声が聞こえたが、粗方着地に失敗したんだろうな。そんなリリーは放っておいて、俺はめぼしい場所の瓦礫を掘り起こす。
家の外壁に使われていたであろう、レンガや粉砕された石くらいしか見当たらない。
それでも俺はそれらをどけて物を探した。
汗が流れ、夕日が見え始めた頃。収穫が無く痺れを切らした俺は、
「ちっ……魔法使うか……」
魔法を使うのに渋っていたのには理由がある。魔法を使用するには魔力が必要だ。人間だれしも一定の魔力を保持してる。
しかし、魔法を使用するということは、魔力を体外に放出するということになる。
この世界には魔法と同時に、魔物なる生き物が存在する。
奴らは人間が放出した魔力を嗅ぎ付ける能力があって、魔法を使用すれば襲われる危険性が高まってしまう。
故に俺は魔法を使いたくない訳だか、ただ瓦礫を探っていても拉致は開かない。何か見つかっていれば話しは別だったが、物欲に負けた俺は、手っ取り早く済ませるため、魔力を練りだす……
最初のコメントを投稿しよう!