絶望の中の光

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目的のために歩く。それが今の俺達に出来る最善の行動だ。しかし…… 「ねぇ~、そろそろ休もうよぉ~」 リリーの体は限界みたいだ。こいつだって女だ。こんな廃墟と化し、元は街だった痕跡があるところを、何時間も瓦礫を登っては降りを繰り返せば、疲れなんて直ぐに襲ってくる。 「そうだな。今日はここまでにしよう。久々の街だ。何か使える物が残ってるかもしれない」 自らを魔王と名乗る男に世界が壊されて、もう5年の月日が流れた。 それからは人間は物資の大切さを学んだ。 忘れかけていた物の大切さを……皮肉なもんだよ。 この名も知らない街もその被害にあったのは明白だ。 「え~……そう言って見つかったこと殆どないじゃん!もう誰かに取られてるよ」 リリーは積み上がった瓦礫の山の頂上から言った。 「あきらめんなよ。瓦礫に埋もれてるかもしんないだろ。宝探し感覚で探せ」 「宝探しね。うん……イイ響き!なら、宝は見つけた方がいただくという方向で!とうっ!」 それだけ言い残しリリーは瓦礫から飛び降りて姿を消した。 本当にガキだ。 俺も宝探しを始めるため、歩きだそうとする。 「いたいー!」 直ぐに後ろから叫び声が聞こえたが、粗方着地に失敗したんだろうな。そんなリリーは放っておいて、俺はめぼしい場所の瓦礫を掘り起こす。 家の外壁に使われていたであろう、レンガや粉砕された石くらいしか見当たらない。 それでも俺はそれらをどけて物を探した。 汗が流れ、夕日が見え始めた頃。収穫が無く痺れを切らした俺は、 「ちっ……魔法使うか……」 魔法を使うのに渋っていたのには理由がある。魔法を使用するには魔力が必要だ。人間だれしも一定の魔力を保持してる。 しかし、魔法を使用するということは、魔力を体外に放出するということになる。 この世界には魔法と同時に、魔物なる生き物が存在する。 奴らは人間が放出した魔力を嗅ぎ付ける能力があって、魔法を使用すれば襲われる危険性が高まってしまう。 故に俺は魔法を使いたくない訳だか、ただ瓦礫を探っていても拉致は開かない。何か見つかっていれば話しは別だったが、物欲に負けた俺は、手っ取り早く済ませるため、魔力を練りだす……
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