絶望の中の光

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「グラビティ・ゼロ」 右手を掲げる。すると、重力に反して周囲の瓦礫が宙に浮く。俺はその範囲を徐々に広げ、半径50メートル程で止めた。 「ゾルドぉぉ!下ろしてぇーー!」 案外近くにいたリリーまで、持ち上げてしまったみたいだな。 「無理だ。ちょっとそこで待ってろ」 声を張り上げてリリーに伝える。返事は返ってこなかった。たぶん、ほっぺをパンパンにしてるだろう。 俺はふわふわと無重力状態で浮いている瓦礫を注意深く観察する。 使えそうな物を探すが、子供用の底の抜けた靴くらいしか見当たらない。 「あっ!見つけた見つけた!」 興奮気味に叫ぶリリー。俺はすぐさま駆けつけた。リリーは無重力の中、必死に腕をバタバタさせていた。 「ほら!そこ!」 リリーが指した方向には、一枚の毛布がまるで、魔法の絨毯みたいに漂っている。 「待ってろ、今取る」 足に魔力を流して強化する。魔力は本当に便利だ。体の能力を格段に飛躍させることも出来るからな。 俺は地面を蹴って飛び、毛布を掴んだ。かなり汚いが久々に暖かい思いで寝られそうだ。今まで毛布はリリー用しかなかったからな。しかし、喜びも束の間…… 「クソッ!」 かなり高いところまで飛んでよかった。上空から遠くを見た俺は、四足でこっちに疾走する魔物の群れを確認した。 その数は30匹というところだ。 「リリー!魔物だ!グラビティ・ゼロを解除するから、肉体強化しとけ!」 返答も待たずに無重力を解除する。 「え!?ちょ……あぁぁぁぁぁ」 ドドドドドドドド!瓦礫が辺りに落下した。リリーの姿は立ち込めた粉塵で見えない。 流石にこれは心配だ。だが直後、粉塵が晴れ瓦礫からリリーが飛び出てくる。金髪に積もった粉を払い落とすと、 「悪かった。毛布やるから許してくれ」 内心俺はほくそ笑んだ。いつものお返しだ! 「いらないわ。見つけたの私だけどゾルドにあげる。てか、持ってるし」 真っ白になった服をほろいつつ、リリーは黄金の剣を鞘からぬいた。目は真剣そのもの、いつもの軽い口調でもない。 それを見て、俺は背中から黒い大剣を抜く。俺達の剣は普通じゃない。持っただけで魔力を吸われちまう魔剣だ。 それが、俺の闇の剣『ソウルイータ』ーと、リリーの光の剣『ピュアレイド』。世界に七本存在する冥界の剣……『七冥剣』の内の二本だ。
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