絶望の中の光

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遠吠えが終わる。それが戦いの合図だった。シルバーウルフ達は瓦礫を縫って俺達に襲いかかってきた。 単体では弱くても、集団で獲物を襲うシルバーウルフの連携は凄まじい。 まず俺にその牙を向けたのは3匹。白銀の毛に夕日が反射して、何ともいいがたい幻想的な輝きを見せている。 「グラビティ」 右手を前に突き出し、対象の重力を何十倍にも跳ね上げる魔法を唱えた。3匹のシルバーウルフ達は、地面にひれ伏し気絶した。 そこに後ろから気配を感じた俺は、振り向きソウルイーターで防御する。本来なら一刀両断できるが、あえて俺はそれをしない。殺生は出来ないんだ…… 涎をダラダラと垂らし、歯茎を剥き出しにしてソウルイーターに噛みついているシルバーウルフを、力ずくでソウルイーターを振り切ることで吹き飛ばした。 その先には、リリーがピュアレイドを構えている。シルバーウルフの白銀の毛は、一瞬で赤に変わり絶命した。 リリーの周囲には、他にもシルバーウルフの死体が転がっていた。死体からは銀色の球体が放出されている。 あれは魂だ。『七冥剣』で殺された生き物は、何かしら魂に影響がある。ピュアレイドの能力は魂の救済。 ピュアレイドを所持している者が生き物を殺すと、その生き物がどんな悪でも、魂は浄化され天に召される。 つまりピュアレイドの所持者に殺されれば、魂は地獄には逝かず、確実に天国に逝けるってわけだ。 ピュアレイドは数個の銀色の球体を吸収し、黄金の球体にして放出していた。 まるで、リリーの体から放出されたように見える。その光景に見とれていた俺は、5匹のシルバーウルフに囲まれているのに気がつく。 リリーに見とれてるとは……まだアイツを女だって思ってんのかな俺は? 「こいよ。犬っころ共」 俺はソウルイーターを構えた。シルバーウルフは低く唸り、飛びかかってきた。
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