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柘榴の声が木々を揺らす風のざわめきにかき消される。
そしてそれさえもかき消すような、人々の殺気立つ声。声。声。
「柘榴ー! 姿を表せ!!」
「お前は生きていてはいけないんだ! お前の存在は、罪だ!」
柘榴は震える体に鞭を打ち、立ち上がった。おぼつかない足取りでただ一点を見据え、上へ上へと。鬼灯のもとへと。
よろめきながら草をかき分けると、深く生い茂った木々が拓けるのが見て取れた。その中央には存在を忘れ去られたかのように寂しげに、やせ細った木がぽつんと佇んでいる。
頂上だ。
鬼灯と約束した、枯れたザクロの木の下。その枝も幹も渇き切って荒れた肌を晒しているのにも関わらず、たわわな実をつけた、不思議な木。
木と草の緑、そして種類の少ない野菜以外は、自然のすべてを紫に彩られたこの国。そこで唯一、赤い実をつけるザクロの木を見つめて、いつか鬼灯が言っていた。
『この木はまるで君のようだ。君のその不思議な魅力は、どこから来るんだい?』
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