序章

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「この化け物が。鬼灯をたらし込んで、何をする気だった!?」 「お前の存在すら忌々しいものを。今まで生かしてやった我らの厚意を踏みにじって、更に禁忌を犯すとは!」 口火を切って責めたてるのは、普段はおどけて人を笑わせることのみに尽力する男、山吹(やまぶき)。そして同じく、人を楽しませる事にすべてを捧げる男、唐松(からまつ)。 気性の穏やかな彼らが、このように怒りと憎しみを露わに声を荒げることは、珍しいを通り越して有り得ないことだった。 それほどに、柘榴の犯した罪は、重い。 群衆は、背中を向けてザクロの木にもたれかかる柘榴を、更に責めた。 次々に重なり合って響く罵詈雑言は降り注ぐ凶器となって、絶え間なく柘榴の存在を否定し続ける。 柘榴はうつむいたまま、ただそれを受け入れていた。 寝しなに突如として追い立てられ憔悴しきった柘榴には、もう何も言う気力はなかった。
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