序章

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興味のままに行動し、それが失せれば切り捨てる。純粋な子供のような瞳で、鬼灯ははにかんだ。 鬼灯の言葉に、山吹が続く。 「ああ、そうだ。お前は楓と結ばれた椿の股を、食い破って生まれてきた化け物だ」 「……つ、ばき……母さま……? 楓……父さま?」 「母さま? 父さま? お前は椿と楓をそう呼ぶのか? まあ、いい。あいつらも、化け物だ。まさか子を自ら生み出すとはな……。交尾で子を成すなど、そこらにいる醜い動物がすることだ」 そう言って山吹は木々の間を指差した。黒い影が、何ともいえない呻くような鳴き声と共に走り去る。 それは4つの耳を持ち、崩れたような歪な皮膚をたるませた、醜い顔の“兎”であった。全身に毛ははく、象のようなひび割れた肌が剥き出しにされている。 兎以外にも、飛び出した目玉と飛び出した背骨、融けた金属のようなくちばしが特徴の“オウム”、そして芋虫のような短い肢体を蠢かせて移動する“鼠”などの動物が一般に知られているが、いずれも見ていて気持ちの良いものではなかった。
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