序章

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生きる価値はない。そう見いだした。だが、柘榴はアトマタスを選ばなかった。 アトマ。 魂が輪廻をさまようものならば、自らのアトマもまた愛を求めてさまようだろう。幾度も幾度もさまよい続けて、同じ過ちを犯すだろう。 そしてまた、思い知るのだ。 ──わたくしの中にも、“愛”はなかった。 そのことに。 最後まで“愛”を見いだせなかった柘榴は虚ろに空を見つめた。 新月にかわって、小さな星々がきらきらと瞬いている。 何度も柘榴の胸を痛めた絶望は、決して鬼灯の裏切りによるものではなく、自らの内にある。 鬼灯の裏切りに、柘榴の心はさほど動かなかった。所詮ヒトとはそんなものだと、端から諦めていた。 諦めをもって締めくくられる愛ならば、それは最早、柘榴が欲した愛ではない。 父が柘榴に与えた愛を、柘榴は人へ与える事は出来なかった。 それが何よりの絶望だったのだ。 ──そんな傲慢なアトマならば、要らぬ。 柘榴は決意した。
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